太釈さんの法話なブログ 200万人が泣いた本

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

200万人が泣いた本

書店が発行するクーポン券の期限が切れそうだったので、慌てて書店に行きました。
買おうと思う本がないときにぶらぶらと見て歩くのも楽しいものです。

本の帯に「200万人が泣きました」と書いてある文庫本を発見しました。
私は、こういう売り文句にだまされないぞ!と思いましたが、他に気に入った本がなかったので買い求めました。

著者のプロフィールを見て、私の知識不足を反省しました。
著者の小川洋子氏は芥川賞作家でした。他にいくつもの文学賞を受賞する著名人だったのです。

私が手に取った『博士の愛した数式』は映画化もされ、心が温まる話を読みたい人におすすめです。



主人公の博士は交通事故に遭い、80分しか記憶が持ちません。80分たてばすべての記憶がリセットされるのです。
新しく来た家政婦に、毎日のように靴のサイズや身長を聞きます。数字だけが博士の言葉なのです。家政婦の息子はルートというあだ名をつけてかわいがります。

ルートが算数の宿題をしているとき、彼がどんなに愚かな袋小路へ入り込んだとしても博士は川底の泥から一粒の砂金をすくい上げるように小さな美点を見いだします。数学は、正解を追い求めてしまいがちです。しかし、数の美しさを見つけることの方が博士にとって重要なのです。

博士が数学の証明問題を解いた時、「ああ静かだ」とつぶやきます。正解を得た時に感じるのは、喜びや開放感ではなく、静けさなのです。

ブッダが悟りを開いた時も博士と同じように「静かだ」とつぶやいたのでしょうか。

嫌われてしまう数学者を愛で持って見つめた作品です。数字の美しさと、人が人を愛する心は同じような気がしました。
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コメント


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No title

貴方は私と違って本当に紹介上手な方です。
その才能があると私は思います。

大渓水 | URL | 2016-03-25(Fri)22:36 [編集]


No title

大渓水さん

コメントをありがとうございます。うれしいです。
私が手に取った本を誰かのために役立てるなら、これほどうれしいことはありません。私も著者の端くれなので、自著を多くの人に紹介してくださることは無上の喜びなのです。

仏教では布施にあたると思います。

太釈 | URL | 2016-03-28(Mon)21:17 [編集]