太釈さんの法話なブログ 生き方の道しるべ その6

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

生き方の道しるべ その6

ボロボロになってゴールしてきたのはツアーで一緒だった男性ランナーです。
彼は現地到着時にアクシデントがありました。自分のスーツケースが紛失してしまったのです。海外旅行ではしばしばあることですが、マラソンに使用するレース用のシューズも入っていたのでした。

「きっと彼はリタイヤするだろうな」
と、誰もが思いました。日本では何回かメダルを取ったこともある実力者だと聞き、「お気の毒に」と同情しました。ツアーの添乗員が、急ぎ現地でシューズを調達してスタートしたのでした。

その彼が、制限時間ギリギリでゴールしたのです。足元には昨日買ったタイ製のシューズではなく、古びたゴムのサンダルがありました。「どうして、サンダルなの?」

夜の完走パーティーで、その疑問は氷解しました。彼のスピーチに誰もが聞き入り、目を赤くしたのです。
「現地で買ってもらったタイ製のシューズは35キロ地点で足が腫れて脱ぎ捨てました。裸足で3キロ走ったけれど、路面は焼けるような熱さでとても走ることができませんでした。『リタイヤしようか』と思った時に、沿道のおばちゃんが自分が履いていたサンダルを脱いで渡してくれました。その後は、今までのどの大会でも感じたことのない不思議な喜びで走ることができました。私はタイが好きになりました。このサンダルは私の宝です」




マラソンは自分が完走するために走ります。あるいは順位やタイムを前回より少しでも挙げるために走ります。
ところが、リタイヤしかかった男性ランナーは「自分が履いていたサンダルを渡してくれたおばちゃんのために」走りました。

自分のためではなく、誰かのために走りました。
すると、「今まで感じたことのない、不思議な喜びの中で」走ることができました。

なぜでしょうか。
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