太釈さんの法話なブログ 言葉にならないことば その3

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

言葉にならないことば その3

宙くんの両親が手話と発語(はつご:声を出して言葉を発すること)の訓練をしていくことを決意した話の続きです。

宙くんはすくすくと成長し、2歳になりました。
2歳の子どもは、まだ指を上手に使うことができません。とくに「チョキ」をするのが難しいのです。ですから、「ぼく、何歳?」と聞かれて、一生懸命に指をチョキにしようとしている愛らしい姿を見ることがあると思います。

ある日のこと、宙くんはお母さんの袖を引っぱり注意を向けてほしいとせがみます。お母さんがふり返ってみると、宙くんは一生懸命に小指でほっぺたを触り、小指を立てています。手話で「お母さん」と言っているのです。宙くんは、何度も何度も練習したのでしょう。宙くんはやっとできるようになって、一番にお母さんに見て欲しかったのです。

お母さんは、宙くんをぎゅっと抱きしめてあげました。宙くんの体温と、心の温かさをしっかり抱きしめました。
「宙くんは聞こえないだけ。耳が不自由なのではないの。私たちが聞こえる世界に引き寄せてあげたらいいの」
宙くんの「できたよ!」という満面の笑みは、お母さんの心に今でも焼き付いています。


弘法大師空海の言葉に、
「良い大工は曲がっている木でもそのまま使う。聖人が人をつかう時は、その人が持っているものをそのまま使う術を知っているものだ」
と、あります。

宙くんのご両親が、彼をそのまま抱き寄せ、聞こえる世界に導いてあげるのだと決心したことも同じです。宙くんが持っている、そのままをつかうことができるのは両親の聖人としての見識なのです。

「自分が変わらなくては!」とがんばってしまうと、それがこだわりとなり妄執となってしまいます。
それよりも「ありのままを受け入れる」ようにしたいものです。

合掌
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