太釈さんの法話なブログ あなたもお大師さま その4

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

あなたもお大師さま その4

衛門三郎は木板に自分の住所、氏名、年月日を書き、訪れたお堂に打ち付けていきました。弘法大師空海さまがこの札を見ると衛門三郎がお参りした事がわかりますように、という意味です。
現在でも、札所を巡礼することを「札打ち」といいます。木札を打ち付けることはなくなり、紙の納め札を奉納しています。「札打ち」の由来は衛門三郎が札を打ち付けたことからきています。

8年間、衛門三郎は四国寺院を20回巡りましたが、お大師さまに会えませんでした。 閏年(うるうとし)に徳島の切幡寺から逆に巡るとお大師さまに会えると思い立ち、逆回り(逆打:ぎゃくうち)を始めました。
「これで、どこかでお大師さまに会えるかもしれない」

遍路転がしとして有名で、急峻な山の上にある12番札所焼山寺の麓へ差し掛かると、衛門三郎は足腰立たず倒れてしまいました。衛門三郎は意識がもうろうとし、死の気配を感じました。目がぼんやりしてきました。
「もう、これまでか」

意識が薄れる中、誰かが衛門三郎の体を起こそうとします。衛門三郎の手を握る人がいます。
「どこのどなたか分かりませんが、私の願いを聞いてほしいのです」
衛門三郎は苦しい息の中で言いました。
「よい、いうてみよ」
その声に衛門三郎はハッとしました。自分を抱き起こして手を握っているのは、ずっと探していたお大師さま、その人でした。
「やっと会えた。私はそなたに取り返しのつかないようなことをしてしまった。私の罪を詫びるために妻と水盃を交わし旅に出た。私の罪を許してもらえないものか」
お大師さまは、
「よく歩いてきた。もうそなたの罪は消えている。しかし、そなたの命が尽きようとしている。一つだけ願いを叶えよう」
衛門三郎は涙でぼやけるお大師さまに手を伸ばしながら
「できる事でしたら、故郷である伊予の国主、河野さまの嫡男(長男)に生まれ変わりたい」
とたのみました。

お大師さまは、小石に「衛門三郎再来」と書き手に握らせると、衛門三郎はホッとした顔をして静かに息を引き取りました。
お大師さまは、衛門三郎が持っていた金剛杖を墓標にしました。その杖は、不思議なことに根が付き、大きな杉の木になりました。この木は、現在でも残されています。

つづく
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