太釈さんの法話なブログ その場へ行け

太釈さんの法話なブログ

高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

その場へ行け

含蓄のある話を頂戴したので、紹介します。

ある檀家さんのお宅で、お勤めを終えてお茶をいただいている時のこと。
何かと気にかけてくださる方で、「困ったことはないですか?」とそれとなく聞いてくださいました。

毎年9月のお彼岸に「戦没者慰霊祭」で法話をさせてもらうのだが、戦争を知らない世代の自分にとってネタ探しに困ることがあると打ち明けました。そうすると、遠くを見るような目で話してくださいました。

「青山繁晴というノンフィクション作家を知っているかい? 彼が作品を書くにあたって大切にしていることがひとつある。何だと思う?」
私にはさっぱりわかりませんでした。

「現場に行くことだよ。」

私には衝撃でした。

「彼は戦争の話を書く時に、硫黄島に渡った。現在では自衛隊の管轄だから、一般人は立ち入り禁止。特別な許可をもらって硫黄島に飛行機で降り立った。でも、彼はタラップから足を降ろすことができなかった。どうしてだろう?」

私は、すっかり思考停止していました。

「自分が今踏みしめようとしている土地の下には、まだ日本に帰っていない遺骨が何千人といる。その上を土足で上がっていいのかと思うと、一歩を踏み出せなかった。」

『現場に行って、その空気を肌で感じる』ことの大切さ、そして、その空気感を文章にしていくことでノンフィクションを作り上げていく過程を教えてくださいました。

私は、戦争を知らない世代であることを隠れ蓑に、本で読んだ聞きかじりの知識だけで法話をしていました。机上の空論では、人の心を動かすことができないことを諭してくださいました。

もうすぐ戦没者慰霊祭です。新たなチャレンジが始まりそうです。

お盆のお参りで、檀家さんといろいろな話をさせてもらいます。

ふとした話で
「法話ネタに困ることがある。特に戦争の話題。戦争を知らない私が、戦争を知らない世代に伝える矛盾がある。」

檀家さんは眉根を寄せて教え諭してくださいました。
「ノンフィクション作家の本を読んだことがある。著者は、『必ず、その場所へ行く』ことを信条としている。」

私が机上の空論を振り回しているだけであることを戒めてくださいました。

「硫黄島に自衛隊の許可を得て降り立った時、タラップから第一歩が踏み出せなかった。まだ何万人もの遺骨がそのままに

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