太釈さんの法話なブログ あのときの水 その2

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

あのときの水 その2

何事もなく過ぎて行った、2週間後です。

ドリンクの棚を補充していると、一人の若い女性がフラフラと来店されました。
「水、水を。」

以前、過呼吸の相談にこられた彼女でした。
色白の顔をさらに白くして、血の気がない。小刻みに息をしながら、体を前屈みにしてつらそうです。
取り急ぎ、水を渡して一口飲んでもらいました。

「いくらですか?」
苦しい息の中で聞きますが、
「後でいいから。」
と、私は彼女の背中をさすり続けました。

やや落ち着いたところで、イスに座らせました。
「深ーく、息を吸ってみて。」
そんなことをいわれても、と言う顔をして彼女は私の顔を見ます。
「大丈夫だだから、息を吸ってみて。」
言われるがままにやってみますが、うまくできません。

「今度は、ゆっくりはいて。」
短い息を吐きます。
「もう一度吸ってみて。」
さっきよりも、息が吸えるようになりました。
「ゆっくりはいて。」
少しできるようになりました。

繰り返すこと、三度。
気持ちが少し落ち着いたようです。水を一口。

もう一度と深呼吸をしてもらいました。
今度は、長く息を吐いて、ゆっくり吸う。これも三度。
やっと顔に赤みが差してきました。

どうやら、今日は体調もよかったのでとなりの本屋さんに来た様子。
ちょっと貧血気味で、フラフラし始めると心配になってきました。「過呼吸の発作が出たらどうしよう。」
そう思うと、どんどん息が苦しくなって止まらない。
「そういえば、となりの薬屋さんにあのお兄さんがいるかもしれない。」
と、助けを求めてきたとのこと。

「何事もなくてよかったですね。」と声をかけると、きれいな笑顔で答えてくれました。
やっぱり、女性は笑顔が似合います。

しばらくして、もう一度同じようなことがありましたが、だいぶん対処法も覚えたようで、「イスに座らせて」と自分でリラックスする方法を編み出したようです。
やがて、宅配ピザの店でアルバイトができるようになったとか。店の内情を愚痴りながら、楽しくやっているようでした。

今でも、この水を見ると思い出します。まだ、宅配ピザの店でいるのかな?
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