太釈さんの法話なブログ 宝福寺ものがたり ヘビ退治編 その2

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

宝福寺ものがたり ヘビ退治編 その2

青年は「ある出来事」を思い出していました。
現実とも夢とも付かない出来事。あれは白昼夢だったのでしょうか。

親戚の新築祝いに顔を出し、結婚相手もいないことを肴に酒を飲まれ重い足を引きずって帰ってきました。着替えもそこそこにゴロリとベッドに横になるとそのままウトウトしてしまいました。
「どうせ、俺なんて。」
悪態をつきながら寝入ってしまったのがいけなかったのでしょうか。

目を開けたような気がしました。いや、それは夢だったのかもしれません。そうでなかったのかもしれません。確認するすべもないまま、視界を左右に向けてみました。

そこは整備された田舎の道でした。突拍子もない場所に突然現れるコンビニ。派手な看板が田舎の風景と不釣り合いでした。道路もお金にものを言わせたように整備され、脇道から飛び出してくることなど考えてもいないようでした。

「ここは、どこだ?」

お酒の抜けないボンヤリとした頭を左右に振ってみますが思い出せません。懐かしい感じがするのですが、幼少を過ごした場所でもありませんでした。映画のワンシーンを見ているようでもありました。
動かない体を無理矢理に動かして立ち上がろうとしました。腰に力が入らず、そのままペタンと座り込んでしまいました。

「あれは何だろう。」

視界の端に寂れたお堂がありました。生け垣に囲まれて道路からは見えないようになっています。しかし、青年には、「ここへ来い。」と誰かが言っているような気がするのです。その声は男のようであり、女のようであり、互い違いに声を掛け合っているようにも思いました。生け垣の隙間からかろうじて見えるお堂。その昔は、堂守がいたのでしょうか、年月が経っている割には傷みが少ないようです。地域の人がお参りに来ていたのでしょうか。

好奇心に駆られて、重い体を引きずるようにお堂へ足を向けました。道の向こう側にあるはずなのに、一歩踏み出しても二歩踏み出しても近くなりません。だんだんと遠くなっていく気さえするのです。どうしても見てみたい、お堂に入ってみたいという気持ちが抑えきれず、足を速めようとするのですが鉛のように足が重い。どうしても前に進めないのです。

「待ってくれ。」

思わず青年は声を上げてしまいました。お堂がどんどんと消えていこうとするのです。そこに何かがあるはずだと直感のようなものが働きました。それも、「自分が行かなくてはいけない。」 なぜか、そう思いました。遠くなるお堂。視界から消えていこうとします。手を伸ばしても捕まらない。どうにもならない、とひざをガックリと突いてあきらめてしまいました。

「あれは何だったんだ」

遠のく意識の中で自問自答するのでした。

続く
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