太釈さんの法話なブログ 宝福寺ものがたり ヘビ退治編 その4

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

宝福寺ものがたり ヘビ退治編 その4

どうなっているのか分かりませんでした。体が宙に浮いているような、意識の中をさまよっているような、不思議な感覚でした。
だんだん目に見えているものがはっきりしてきました。見えているという表現が正しいのか、それすらもわかりません。まるで、箱めがねで川の中を覗いているようでした。

誰かがいる。あの声だ。聞き覚えのある、太く腹の底から響いてくるような声。でも、荒々しいわけではなく、優しさがこもった声。

「だれ?」
青年の質問にはだれも答えてはくれませんでした。相手には聞こえないようです。箱めがねでのぞくしかできないもどかしさを抑えながら、その光景に見入ってしまいました。




「困ったことよのう」
何回「困った」を言ったのでしょうか。頭を付き合わせてみても妙案は出てきませんでした。


場所は、阿波国鳴門。
鳴門を南北に隔てる山、大麻山が低い稜線を描いています。霞が掛かる山々を見ているとヘビがうねうねと背を伸ばしているようにも、ぐるぐるととぐろを巻いているようにも見えます。「ヘビの山」と異名をとる山々。あちらこちらにヘビにまつわる話があります。中には本当にヘビがいたらしいのです。そして退治をした強者や法力で封じ込めた話もあります。悲しい人身御供もあったようです。


「困った」相談とは人身御供のことです。決まって10月頃になると、通称ヘビ山からゾロゾロとヘビが現れ、田畑を荒らしてしまいます。せっかくの収穫時期に荒らされたのではたまりません。そこで御供えをしてみたり、魔除けの踊りをしてみたり、ヘビが嫌う火を焚いて護摩祈祷をしてみたりしましたが、効果はありませんでした。誰が言い出したのか「人身御供をしてはどうか」となったのです。

ある年の10月も末のこと。ついに「それ」は実行されました。以来、パッタリとヘビの襲来は無くなりました。今年はどうするのか、頭を悩ませているのです。

つづく
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