太釈さんの法話なブログ 宝福寺ものがたり ヘビ退治編 その7

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

宝福寺ものがたり ヘビ退治編 その7

村人たちを帰した後、小僧さんにも知られないようにこっそりと寺を出た住職は山の麓を東へ歩いていました。しばらく行くと、うっすらと明かりが見えます。小さな庵を結んで誰かが住んでいるようです。

控えめに表戸を叩くと、顔を出したのは尼さんでした。住職は人知れず逢っていたのです。寺は女人禁制の時代です。ましてや寺を預かる住職がこっそりと尼さんと会っていると知れれば寺を追い出されます。それを承知で、わざわざ来たのには理由があります。

尼さんは身元を決して明かそうとはしませんが、その優雅な物腰、言葉遣いから京の都から訳あって落ちてきたのではないか、いや、もっと人に言えない政争に巻き込まれてのことであったと住職は考えていました。

縁があれば都で何不自由することもなく過ごせたものの、こんな田舎に落ちなくてはいけなかったのは命の危険があったからに違いありません。互いにそれを口に出すこともなく、仏さまの話や教典談義に花を咲かせいたのです。

何より、その美しい美貌は観音さまと瓜二つです。観音さまが似たのか、尼さんが似たのか、それはどちらでも良いほど美しい姿でした。

身の上のためでしょうか、決して村人と交わることもなく、ひっそりと息を詰めるように暮らしていたのです。人づてに話を聞いた住職は、一目で心を奪われてしまいました。だからこそ、人目を避けて逢いに来ていたのです。
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