太釈さんの法話なブログ 宝福寺ものがたり ヘビ退治編 その21

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

宝福寺ものがたり ヘビ退治編 その21

その時、視界の端で光が見えました。

それは人の姿のようであり、ただの光のようでもありました。
だんだん近づいてくる光。まっすぐにヘビに向かっています。その正体が分かった時に元意上人は叫びました。
「それは、ダメだ。」

光の正体は、あの尼さんでした。
昨日別れを告げ、どこかへ身を隠すために旅に出たはず。尼さんの体は金色を放っていました。その姿は、紛れもなく観音さまでした。

尼さんは京の生まれ。
男に生まれると殺されてしまうので、女の子でありますようにと母が観音さまに祈ったそうです。生まれた子どもは女の子。それも観音さまのようでした。
「あなたは観音さまの子よ。」
物心つく前からずっと母に言い聞かされていました。

今、元意上人を守るため観音さまに身を替えて現れた尼さんは、まっすぐにヘビに飲まれていきました。
あっという間の出来事でした。

観音さまになった尼さんを飲み込んだヘビは恐ろしい声を上げ、のたうち回りました。
口からは泥のような真っ黒の液体を出し、体が痛いのか、しきりに地面にすりつけています。やがてボロボロとウコロがはがれ落ち、喉元の逆鱗だけが残りました。
「あぅぉぉぉぉぉ。」
ゴボッという音とともに、逆鱗がはがれ落ちました。するとヘビはみるみるうちに小さくなり、白龍になりました。その姿は、精気を吸い取られ見る影もありませんでした。

「白龍」
元意上人は白龍を抱き起こしましたが、すでに虫の息です。
「元意よ。」
「白龍、何も言わんでもよい。ワシらはそれで何でも分かり合ってきたではないか。」
「人間に戻れて、よかった。」
花のような微笑みを残し、命の火を消したのです。
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