太釈さんの法話なブログ 裏山の獅子神さん その4

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

裏山の獅子神さん その4

けものみちを気にすることなくどんどん山に入っていく。
「どこからでもかかってこい。」
獅子神の顔を見たくてウズウズする。目をギラギラさせながら探しても見当たらない。
獅子神は見る影もない。だんだんイライラしてきた。「出るなら出ろ」

山に入って小一時間。怒りも絶頂に達した頃、
「ガサッ」
来たか、と目を向けると一匹の猪。鼻をならして怒っている。
「何だ、猪か」
期待外れと苛立ちで一刀のもとに切り捨てた。

それからというもの、ずっと見られているような気がした。それは山を降りるまであった。

数日後、再び山に入ってみた。やはり見られているような気がした。
「ガサッ」と茂みが揺れた。ヌッと出てきたのは獅子神であった。
「ついに出たか。待っておったぞ。」
スラリと刀を抜き、身構える。
獅子神は怒りを含んだ、しかし、哀しそうな目をしていた。
「そんな目で見るな」
獅子神も一刀のもとに切り捨てた。
「口ほどにもないわ」
意気揚々と村へ帰り、歓待を受けた。名を上げた僧兵は、城に抱えられ武士となった。

ただ、あの獅子神の目が忘れられなかった。怒りを含んだ、哀しそうな目を。

やがて城を辞して庵を建てた。獅子神は山を荒らし、自分の名誉のために殺生を行うことに警鐘を鳴らすために現れた。

「仏の側にいながら、その心を知らなかった。」
僧兵は獅子神をまつり祠をたて、それを護ることに生涯を費やしたという。

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