太釈さんの法話なブログ 春はあけぼの その5

太釈さんの法話なブログ

高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

春はあけぼの その5

「あった。」
彼の低い声が、興奮を帯びて聞こえてきました。石のわずかな凹みを指で確認しながら、書かれている文字を解読していました。
「明るいと雲、たぶん『明雲』と書いてある。」
彼は大発見したように、目をキラキラさせました。私は、ホッとしました。「もう、夢に出てこない。」

その後、彼は調査のために何度かほこらを訪れたようです。地域の人に明雲上人の事を聞き、結果をレポートにまとめたところ予想外の反響がありました。
地域の信心深い人たちが寄進を募り、ほこらを囲うようにしてお堂を建てたのです。そして、明雲上人がいた頃のような活気を取り戻しました。

ところが、この話を聞きつけた土地の所有者と名乗る者が現れました。
「誰の許可を得てお堂など作ったのだ。こんな石ころに御利益などあるものか。場所を貸して欲しければ賃貸料を払うのが筋だ。」
やがて信者と土地の所有者は対立してしまいます。ついに、土地の所有者はお堂には入れないように、山の入り口に柵を立ててしまったのです。
「何人も入るべからず」
やがて、お堂は風雪によって崩れ落ちてしまいました。

不思議なことに、羽振りのよかった土地の所有者もいつしか没落し、どこへ行ったのか誰も知らないと言います。

「沙羅双樹の花の色 盛者必衰のことわりをあらわす」
関連記事
スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する