太釈さんの法話なブログ ヘビ神さまのものがたり その1

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

ヘビ神さまのものがたり その1

頬をさらっと撫でる風が冷たくなってきました。
早足で駆け抜けていく季節の移り変わりを風が教えてくれます。どこかもの悲しい秋の夕暮れ。

工事車両が通るので農道はアスファルトが敷かれ、道幅は以前の倍になりました。工事車両以外はあまり通る人もいない道は、あるお寺へと続いていました。大きなため池のほとりにあるお寺。住職が開いている法話会に向かっていました。法話、といっても昔話の語り部のようで面白いのです。

「わしは学者になり損ねてな。」
口ぐせになってしまったことに本人は気付かないらしく、何度となく繰り返します。聞けば「民俗学者」になりたかったとか。できることなら考古学をやりたかったようです。古墳や遺跡でスコップと刷毛を持って、探検隊がかぶりそうな帽子で泥まみれになることが住職の夢でした。しかし、寺の長男に生を受け、運命に従うしかありません。一度だけ先代の住職に「学者になりたい」と言ったそうです。

「師匠、折り入ってお話が。」
「何だ。」
ギロリと睨んだ目はまるでヘビのようでした。日に睨まれたカエルは脂汗を流すしかありません。ガマの油であれば高く売れるでしょうか。
「学者になりたいと思います。」
先代の住職は、それを聞いた瞬間から腹を抱えて笑い出しました。
「檀家の供養もできん男が、学者になるだと? 誰でもいいから一人でも成仏させてから寝言を言え!」
ガマの油は売れないようです。

住職の夢は破れ、高野山での修行の後は門前の小僧でした。
考古学の夢は破れても民俗学という学問があることを知り、地域の民話や昔話を聞いて回り法話として檀信徒に語り継いでいます。

今日は、法話の日。
どんな話が飛び出すでしょうか。

つづく
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