太釈さんの法話なブログ 聞こえない声を聞いた少女 その3

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高野山の布教師 太釈さんがミニ法話を綴ります

聞こえない声を聞いた少女 その3

 七月中旬から九月初めまで徳島県立美術館で特別展「無言館所蔵作品による戦没が学生命の絵展」がありました。無言館

 私は、特別展を見るまでは「行きたくない戦争に行かなくてはならない中で描いた作品だから、きっと暗い絵が多いに違いない」と思い込んでいました。しかし、特別展に足を踏み入れると私の考えが間違っていたことに気がつきました。全体的に明るい絵が多かったのです。自画像や家族の絵、自宅の窓から見えた風景など、戦争を感じさせない絵でした。

 私の目にとまった絵があります。場所はリビングでしょうか。大きなテーブルの周りを囲むように家族が座っています。着物を着て髪を結い上げたおばあちゃん、羽織袴姿のおじいちゃん、紅茶を入れようとしている母、どっしりと威厳を持って座っている父、そして、後方には絵筆を持っている本人の自画像を描いています。テーブルには果物と紅茶が載っていて、楽しく談笑をしている一場面を切り取ったようでした。きっと仲の良かった家族の姿を残しておきたかったのだろうと思いました。

ところが、絵の解説を読んでびっくりしました。ご遺族は言います。
「うちではこういう部屋もなければ、家族揃って食事をしたこともない。美術学校に行かせるために家宝のケヤキの木を切って学費を捻出したほど貧しかった。きっと彼が憧れた家族団らんだったのではないか」
全くの空想画だったのです。きっと無事に帰ってくることができたなら家族でテーブルを囲んで家族団らんを楽しみたかったのではないかと思います。
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