太釈さんの法話なブログ 戦没者慰霊祭2013 恕すこと その5

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戦没者慰霊祭2013 恕すこと その5

さて、ここで特攻隊にまつわる悲しいエピソードを紹介します。

特攻隊の教官で藤井中尉という方がいました。
自分の教え子たちが次々と出撃していく中、自分だけが安全な任務をしていることに耐えられなくなったある日、特攻隊に志願しました。

しかし、それは受理されませんでした。
彼には妻と幼子が二人おり、教官としての職務もありました。さらにパイロットでもなかったのです。
特攻隊に志願する夫を奥さんも必死に説得しました。しかし、夫の決意があまりにも固いことを知り、二人の幼子を連れて入水自殺をしてしまいます。
一歳の二女に晴れ着を着せておんぶし、三歳の長女と自分の手を紐で結んだ痛ましい遺体が発見されました。その遺書には「私たちがいたのでは後の憂いになり、思う存分の活躍ができないでしょうから、一足お先に逝って待っています」と、書かれていました。

時は凍てつくような十二月の川縁です。凍てつくような寒さの中、変わり果てた妻と子どもたちの前にうずくまり顔の砂をやさしく払いながら声を殺して泣きました。

この後、藤井中尉は三度目の志願をし、出撃を命じられました。自らの小指を切って血書での嘆願でした。

彼の遺書には、
「冷え十二月の風の吹き荒ぶ日
荒川の露と消えし命。
母と共に殉国の血に燃ゆる父の意志に添って、
一足先に殉じた哀れにも悲しい、
然も笑っている如く喜んで、
母と共に消え去った、幼い命がいとほしい
父も近く御前達の後を追って行けることだろう
厭がらずに今度は父の膝に懐で
だっこして寝んねしようね
それまで泣かずに待っていて下さい
千惠子ちゃんが泣いたらよく御守りしなさい
では暫く左様なら
父は戦地で立派な手柄をたてて
お土産にしてまいります
では
一子ちゃんも千惠子ちゃんもそれまで待って頂戴」
と、書かれていました。


誰もが「生きて帰るために戦地へ」向かいました。
家族はずっと待っていたのです。


つづく
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